2015年6月22日月曜日

2次提訴を行いました!


2015年6月22日

南相馬避難解除取消訴訟(20ミリ基準撤回訴訟)第2次提訴のご報告


南相馬避難解除問題弁護団

 本日、本年4月17日に提訴した南相馬避難解除取消訴訟(20ミリ基準撤回訴訟)について、第2次提訴を行いました。同訴訟は、政府が年間積算線量が20mSvを下回るとして、2014年12月28日付で特定避難勧奨地点を解除したことに対し、指定地域の住民が、解除基準が高すぎ、子どもを安心して育てることはできないなどとして、解除の取消し等を求めているものです。第2次提訴に加わったのは計73世帯であり、第1次提訴を併せると、特定避難勧奨地点に指定された世帯の6割以上が原告となりました。


背景

  • 政府は福島第一原発事故後、2011年6月から、避難指示区域以外に「特定避難勧奨地点」を設定。これは、避難指示は出されなかったものの、年間の積算線量が20mSvを超えると推定される地点について、政府が世帯単位で指定し避難の支援・促進を行うもの。原子力災害対策特別措置法20条3項に基づく指示であり、南相馬市では153世帯が指定された(その後1世帯は指定取消)。
  • 2014年12月、政府(原子力災害現地対策本部)は、年間の積算線量が20mSv以下となることが確実であるとして、南相馬市における特定避難勧奨地点152世帯すべてについて、同年12月28日付で解除すると通知した。
  • 指定地域の住民は、①いまだに高線量の地点が残っていること、②年間20mSvは解除基準としては高すぎ子どもを安心して育てることはできないなどとして、地点の解除に反対してきた。

裁判の内容

  • 原告:南相馬市内の特定避難勧奨地点が所在する行政区の区長・住民
    • 原告数
      • 指定世帯:第2次提訴31世帯126名(合計94世帯415名、指定世帯の約62%)
      • 非指定世帯:第2次提訴42世帯148名(合計112世帯393名)
      • 第2次提訴合計;第2次提訴73世帯274名(総合計206世帯808名)
    • 地点が指定された行政区の全区長が参加
  • 被告:国(原子力災害現地対策本部)
  • 裁判所:東京地方裁判所
  • 請求の趣旨
    1. 国(原子力災害対策現地本部)による地点解除の取消し/原告らが地点に指定されている地位にあることの確認(行政訴訟)
    2. 国に対し違法な解除によって生じた精神的苦痛への一人10万円の慰謝料請求(国家賠償請求訴訟)
  • 訴訟における主張:年間20mSv基準による解除は違法である
    1. 低線量被ばくについては安全と言える閾値は存在しないことが国際的なコンセンサス。
    2. 憲法や国際人権法は生存権・健康への権利を保障。また原子力災害特措法は国民の生命・身体の保護を目的としている。
    3. 国際基準も日本の法令上も公衆の被ばく限度は年間1mSvとしてきた。
    4. したがって政府は住民の被ばくを年間1mSv以下とすべき義務を有する。
    5. 年間20mSv基準での解除はかかる義務に反するものであり違法である。
    6. 解除にあたって住民の関与・合意を求める政府基準や国際基準にも反する。
    7. なお国際放射線防護委員会(ICRP)も、原発事故後の基準として「年間1mSv ~20mSvの下方部分から選択すべきであり」、「過去の代表的値は年間1mSvである」と勧告。

提訴の意義

  • 年間20mSvを避難基準とする政府の避難政策や避難指示解除を正面から争う初の裁判。
  • 地点の解除により支援策と賠償が打ち切られ、事実上の帰還の強要がなされる危険性あり。実際には健康への懸念からほとんどの世帯が帰還を希望しない中、支援だけを打ち切ることは不当。
  • 政府による避難指定世帯の6割、全行政区長が参加する地域一体での異議申立て
  • 「居住は可能だが避難は支援する」=選択的避難というあり方の提唱

連絡先

南相馬避難解除問題弁護団
早稲田リーガルコモンズ法律事務所気付
東京都千代田区九段北1-4-5 北の丸グラスゲート5F
03-6261-2880 / FAX: 03-6261-2881