2016年6月10日金曜日

住民の反対意見を無視して解除…第4回口頭弁論期日における法廷における原告の訴え

原告のSと申します。

私たち原告は、本日の裁判で、特定避難勧奨地点の解除に関する手続に違法性があったことを主張しています。これは、原子力安全委員会が、「関係者と充分な協議を行うこと」や、解除の際に「関連する地元の自治体・住民等が関与できる枠組みを構築し、適切に運用すること」を求めているにもかかわらず、南相馬市や住民の意見は無視され一方的に解除されたことの問題を問うものです。

私の世帯は、特定避難勧奨地点に指定されていましたし、私自身、平成26年4月から行政区の区長を務めておりますので、特定避難勧奨地点の解除に関する区長説明会や住民説明会に参加してまいりました。原告が提出した準備書面(4)は、それらの説明会で私たちが感じたことや、内閣府や南相馬市に情報公開請求をして判明した、解除までに行われた説明会や打合せの内容をもとに、どれだけ私たちの切実な訴えが無視され続けてきたのかを明らかにするものになっております。その内容の一部について、私からご説明させていただきます。

 まず、特定避難勧奨地点の解除にあたり、国が私たち住民の意見を聞こうとしていなかったことは、最後の説明会当日の状況から明らかといえます。平成26年12月21日、この日の午後には、特定避難勧奨地点に関する区長説明会と住民説明会が予定されていました。しかしながら、その日の朝のNHKのニュースで、特定避難勧奨地点の解除が決まったという報道がありました。私たちは、説明会の前に解除が決定事項となっていて、私たちの意見を聞こうとしない国の姿勢に、不信感を募らせるばかりでした。

国が私たちの意見を聞くつもりがなかったことは、国が南相馬市との間で行った打合せの際の発言からも明らかです。平成26年4月16日、国と南相馬市の間で行われた打ち合わせでは、被災者生活支援チームの井上参事官から、「説明会であり、協議の場ではない!」、という発言がありました。平成26年11月19日、国と南相馬市の間で行われた打ち合わせでは、現地対策本部の福島班長から、「12月の住民説明会では解除反対の声が強く出るだろうが覚悟をもってやるということだと考えている。」、という発言がありました。これらの発言からは、私たちが強く反対していることを認識しながら、解除を押し通そうとする態度が見えてきます。

そして、子どもたちへの健康影響を訴える私たちの声も無視され続けてきました。私たちは、住民説明会などを通じて、「農地除染や子供が歩く可能性のある市道、農道等の除染が終わってから解除するべき。」、「農地に面したところなど、子ども達の生活圏で心配なところがある。子ども達に安全で安心を宣言するには、まだ早いのではないか。」、「解除し、子供が戻ったとしても道路の両端の線量は高い。また、子供の行動はコントロールできない。」などの意見を述べています。小さい子どもは、親に放射能が危ないから近づいてはいけないと言われても、道路の脇や農道など線量が高いところにも近づいてしまいます。敷地内のホットスポットにも、小さい子どもは分からず近づいてしまいます。それにもかかわらず、国は、実際に生活する住民の声を全く無視して、ホットスポットへの配慮など一切することなく、指定したときの基準で解除するという姿勢を崩すことはありませんでした。

前回の裁判の時にもお話しした、室内の線量の高さについても、私たちは繰り返し訴えてきましたし、室内の線量が屋外と変わらなくなっていることは、既に明らかになっています。しかしながら、室内の線量の高さへの不安を訴える私たちの意見は無視され、解除の際にも、玄関先と庭先の線量が測定されただけでした。平成26年3月13日、国と南相馬市との間で行われた打合せでは、環境省福島環境再生事務所の松岡企画官から、「室内には放射線は入っていない前提でやっているので、室内の除染もできない。」、という発言もあります。このような発言からすれば、当初から、室内の線量の高さへの不安を訴える私たちの意見など、聞くつもりもなかったのだと思います。

最後に、南相馬市の特定避難勧奨地点に指定された世帯のある地域の住民たちは、特定避難勧奨地点の解除に反対しています。繰り返し要望書を提出するとともに、現地対策本部などに対し、直接、特定避難勧奨地点の解除に反対する意思を伝え、再度のモニタリングや除染の必要性を訴え続けてきました。解除までに行われた住民説明会や区長説明会でも、反対意見しか出てきておりません。それにもかかわらず、私たちの要望は聞き入れられることはなく、指定時の基準を下回ったという理由で、特定避難勧奨地点は一方的に解除されてしまいました。

裁判官には、原告の主張や証拠をよくご覧になっていただき、特定避難勧奨地点の解除にあたり、原子力安全委員会の意見に反して、私たち住民や南相馬市の意見がどれだけ無視され、解除が強行されたのかを分かっていただきたいと思います。

よろしくお願い申し上げます。

以上